世界をつくる人

 

彼は箱の中に入っていた
完全に独りになると
自我は世界よりも広かったから
世界もその箱の中に入っていた

無意味にも似たガラクタが
箱の中で一生懸命ころがっている
グラスに入った何かと 何かと 何かと
宙に架かる棒の上を
転がる丸い 何かと 何かと 何か
何かは集まって 新しい何かをつくる

それは世界だった
閉ざされた箱
近づくと消えてゆくはかない世界
とりとめられた窓ガラスが
必死に守っている
臆病を演じる彼の孤独と
私の孤独を

大切なのは箱の中と
この部屋の中と
自分の中にしかない
そこに小さな世界をつくる
どこにでも散らばっている
ガラクタだけで

すると無意味が融合して
一瞬だけ箱の中に
あの世界ができる

この感覚を忘れたくないから
また箱の中を覗くと
時が箱の中で止まっている

それを見た私の時は
思いだしたように
この世界で動きはじめる

-200809-