喪失の回廊の椅子

 

私はここにいない
無限にも思える 回廊にならぶ
椅子に座るのは みな私
回廊を歩くと 私たちが微笑む

私が私を見失うために
かつて私がならべた椅子
佇むこの私は 茫然として
この存在感は失われてゆく

私はどこにもいない
どんなに探しても 椅子に座っている
私たちの中に この私はいない

私も椅子に座ると
隣にいる私たちが 私をみている
もうどれが私だったのかも
わからなくなってきて
隣の私が この私のような気さえする

すると誰かが 回廊の向こうから 歩いてくる
それは私の探していた 私
私はそっと 私に微笑む

-200810-