月を買う人
お金があまっていた
宝くじで三億あたったから
使い果たせないとぼやいていると
友人に月を買うように薦められ
ぼくは月を買った
地球なんかを買うよりは
夢があると思ったから
だから今日から月はぼくのもの
月は別段いつもと変わらない
でも月はぼくだけに囁くようになった
地球が妬むくらい
白い音楽の波
月は色々な顔を見せるようになった
夜の空気がまったく違うものになった
ぼくは大きくそれを吸い込んだ
けれどどんなに手を伸ばしても
月には届かなかった
ぼくは月に行きたいと思った
だからその方法を試した
ジャンプした 届かない
飛行機に乗った 届かない
ロケットを作った 飛ばない
届かないとわかった途端
月はますます美しく
ぼくはその美しさを嫌った
だから月を地球に返すことにした
今度はあの太陽を買おう
夢は大きい方がいい
早く朝にならないかな
しかし今日の夜は長すぎる
もしかしたら誰かが先に
買ってしまったのだろうか
それならそれでいい
ぼくはこの月のない夜を買うから
いつか全ては買い尽くされて
残った虚無さえ買う人がでるんだろう
そのときまだ残っているのが
多分ぼくの本当の欲しいもの
-200809-