「僕は、何処まで行くのだろう」
そう問いかけたところで答えを得ることができないのは明白だったが、なんとなく呟いてみた。
眼前には、雄大な大地を覆う白銀が果てなく広がっている。後方を振り返れば、無数の足跡が美しい直線を成していた。
踵を返し、これを辿れば……そこには、きっと君がいるだろう。
僕が歩み雪を踏み沈めるたびに、雪は瞬く間に消えてしまった。なんと、儚いのだろう。降りそそぐ春先の陽光でさえ僕を暖めてくれるのに、雪は解けてしまう。なんと、切ないのだろう。
それは、まるで君のよう。
時折、僕を戒めるように風が吹き荒れ、体温を奪って何処かへ逃げて行った。少しずつ、少しずつ、痺れが僕を侵食して、終いには動けなくなってしまいそうだった。
僕は瞼を閉じ、一つ溜息を吐いてから、改めて銀色にきらめく大地を見すえた。
ここを越えれば、何かがあるかもしれないし、無いかもしれない。それは、味わったことのない喜びかもしれないし、想像の範疇を越えた恐怖と悲劇かもしれない。もしかしたら、絶世の美女との出会いがあるかもしれないし、できるならことなら避けたいが、汚らわしい野獣との出会いも。
結局、いくら思考したところで何も解からなかった。不確定要素ばかりが僕の中を駆け巡る。それでも、戻る気にはならなかったし、今さら戻れるわけもない。
もう、君に会うこともないだろう。せめて、「さよなら」くらいは告げて来るべきだったかもしれない。それも、今さらでしかないのだけれど。
「僕は、何を求めて行くのだろうか」
そう問いかけたところで答えを得ることができないのは明白だったが、なんとなく呟いてみた。
淡雪
(振り返ってばかりはいられないんだ。)
→詩ver.