「最近、元気ないな」
 あなたは眉尻を下げて、私の顔をのぞきこんだ。
「そんなことないよ」
 私が笑うと、あなたは少し首を傾げた。なにか言いたそうに開かれた口は、結局閉じられて、あなたは私の手をひいた。
 少しの間、あなたの背中を見つめる。
 私の笑顔が造り物だということを、あなたは気づいているだろうか。
 近いのに、すごく遠くて、すぐにあなたの隣にならんだ。
 それでも、やっぱり遠くて、気づかれないようにそっと、繋いだ手に力をこめた。
 お願い―――これ以上、遠くにいかないで。もっと近くにとは望まないから、このまま私の嘘に、気づかないで。



 あなたが私に向けてくれる笑顔は、きっと嘘じゃない。
 でも、気づいてるよ。
 あなたの心に住み着いた、私以外の誰かさん。
 夜になると、無性にやるせない思いがこみ上げて、涙がこぼれた。
 最後にあなたの前で泣いたのは、いつだったかな。
 何度も携帯電話を開いては、あなたの番号を見つめて、閉じる。
 思いは流すことができなくて、全部全部のみ込んだ。また、涙がこぼれる。
 辛いよ、苦しいよ―――でも、なにより、あなたが離れていってしまうのが、怖いよ。
 知らない振りをしていれば、あたなの傍にいられる。



「好き」
「なんだよ急に」
 あなたは笑った。苦笑して、私の頭を撫でた。
 それは、照れかくし?
 昔のあなたは、私が「好き」と言うたびに、微笑んでくれたよね。思い出が、切ない。
 いつから、変わってしまったのかな。
 あなたが返す苦笑には気づかないふりをして、私は何度も「好き」と言う。
 ただ、あなたと私が恋に落ちた最初の気持ちを、思い出して欲しかっただけ。



 好きだよ。好きだよ。
 辛いよ。苦しいよ。
 でも、傍にいたいよ。
 好きだよ。それなのに―――。
 造り物の笑顔は、慣れるばかりか、どんどん下手になっていく。
「最近、元気ないな」
「そんなことないよ」
 まだ、大丈夫かな。
 綺麗に笑えてるかな。
 お願い―――これ以上、遠くにいかないで。もっと近くにとは望まないから―――。





Keep a smile.

(あなたが私の嘘に気づいてしまったら、きっとそれが最後。)





(100531)