「こんにちは」
 少女は聞きなれた声に振り返った。少し離れたところに少年がいた。
「こんにちは。どうしたの?」
 小首を傾げる少女に、歩み寄ってきた少年は右手を差し出した。
「これを君に」
 手渡されたのは、ふんわりと可愛らしい小さな白い花。
 少年の思いがけない行動の意図が掴めず無言になった少女を傍目に、少年はもといた方向に踵を返した。
「え、ちょっと! いったいなんなの?」
「さっき見つけたんだ。その花を見ていたら、君の顔が浮かんだから」
 そう言って、少年は行ってしまった。
 暖かい春の陽光が、少女を照らしていた。
 少年から貰った花を見て、少女はやわらかく微笑んだ。






白い花

(ちいさな、ちいさな、幸福)